こんにちは。主任ケアマネージャーの里(さと)です。
私はケアマネになって12年。この仕事を楽しくて続けています。
今日はケアマネの独立について、私の経験と知識を基にお話しします。
ケアマネージャーの資格があれば、自分一人で居宅介護支援事業所を運営する事が出来ます。
一人で経営する場合は
- 社長
- 居宅管理者
- ケアマネジャー を一人で担います
実際に私の地域にも、一人で居宅介護支援事業所を経営しているケアマネは存在します。
そして私も、一度は独立を考え、法人設立や居宅介護支援事業所の運営の詳細を細かく計画しました。
その結果私は、ケアマネの仕事をするなら、独立せずに雇われた方が良いと考えています。
しかし私の考えとは逆に、独立した方が仕事人生が豊かになるという考えもあります。
そこでこの記事では、ケアマネは独立せずに雇われの方が良い私の考えについてまとめました。
この記事を読むと、自分は独立した方が良いのか、雇われた方が良いのかの判断ができます。
もし独立する道を選ぶとしても、起業する覚悟ができます。
居宅介護支援事業所の設立を検討している人は、必ず最後まで読んでください。
ケアマネが独立を考え出すタイミング4選
独立するケアマネは、ケアマネになった時から独立を考えている訳ではありません。
ケアマネとして実際に業務をしていく過程で、自分で経営したいと思うようになるものです。
ケアマネが独立を考え出すのは、大体このような条件が揃った時です。
確かに、上記の4つの条件をクリアしていれば、独立運営は現実的に成功します。
この条件について、一つずつ説明していきましょう。
所属する事業所の上司や同僚と合わない
ケアマネが所属する居宅介護支援事業所の殆どは、ケアマネジャーが3人以上勤務しています。
居宅介護支援には特定事業所加算があるため、ケアマネの体制によって加算が算定できます。
ケアマネの事業所は体制が整っている方が、事業所の収益が上がります。
社会福祉法人や合同会社など、その規模は様々ですが、会社員としての社内関係は通常のサラリーマンと同様に発生します。
私の地域の居宅介護支援事業所でも、人間関係が辛くて退職するケアマネは多いです。
自らが社長となり、誰も雇わずに会社と事業所を経営すれば、社内の人間関係へのストレスは無くなります。
仕事量と収入のバランスに不満がある
実際にケアマネとして働いている人の一番多い不満は、収入が見合わない事です。
ケアマネは精神労働と言われる分野で、仕事内容は単に介護サービスの調整のみではありません。
市町村や病院、介護事業所、利用者と家族間の関係など、様々な関係性を取り持つことも多いです。
ケアマネは介護サービスのみでなく、本人の周りの人間関係全てを含めて、生活環境を整えます。
それゆえに、40人もの担当を受け持ち、一人一人の環境整備を行うケアマネの仕事の大半は精神労働です。
居宅介護支援事業所の収益となる居宅介護支援費は、介護度により決まるため、仕事内容は関係ありません。
居宅介護支援事業所のみでは、会社に大きな収益は無いのです。
事業所に雇われるケアマネが、仕事量が収入に見合わないと思うのも納得できます。
管理者業務が1人でも出来ている
居宅介護支援事業所の管理者は、ケアマネジャー業務と、管理者業務を兼ねています。
管理者に必要な知識と実力がある人は、事業所を一人で運営する事も可能です。
そもそもケアマネは事業所外でのコミュニケーションが多く、単独事業所のようなものです。
管理者業務が出来るケアマネなら、すでに独立開業できるスキルを持っています。
1人でも新規獲得に自身がある
ケアマネの業務を続けると、勤めている事業所の地域性への知識が増えます。
介護サービス、自費サービス、市町村独自の事業にも、豊富な知識を持つようになります。
ケアマネの新規依頼は、市区町村や病院からの依頼が殆どです。
知らない家や企業へ営業に行くわけではありません。
行政や病院関係者と仕事上の関りも増えることで、ケアマネとして信頼性を築きます。
その地域で信頼性のあるケアマネは、新規依頼も多く、独立後の新規獲得がスムーズです。
ケアマネは独立せず、雇われが一番良い理由5つ
ケアマネが一人で事業所を開業する事は珍しくありません。
ケアマネの仕事が好きで、数年の経験と地域での新規獲得が可能であれば経営は成り立ちます。
会社経営としての経験も、良い人生経験になります。
たとえ経営継続が難しくなり廃業しても、在庫や負債に苦しむこともありません。
しかし私は、ケアマネは起業するよりも、雇われが一番だと考えています。
ここでは雇われの方が良いと考える、現実的な理由5つを解説します。
このような条件を考えると、一人ケアマネは事業所を継続する事はできても、利益は期待できません。
介護の求人情報ならカイゴジョブ。ヘルパー・ケアマネ・生活相談員などの求人案件を30,000件以上掲載。事業所の設立条件は難しくないが、それなりに費用がかかる
居宅介護支援事業所の設立は、大きく分けて、会社設立と事業所設立の2つが必要です。
物販の事業とは違って、店舗や商品在庫なども必要ないとはいえ、それなりに費用はかかります。
開業までにかかる費用は、およそ100~150万円です。
合同会社の設立
一人で独立するなら、会社は設立費用が一番安い、合同会社があれば十分です。
合同会社の設立は、会社の住所が決まれば、必要書類を法務局へ提出して設立します。
居宅介護支援事業所の設立
居宅介護支援事業所の設立に必要な書類は、開業する市町村役場で取り寄せできます。
各市町村のホームページでも説明や書類印刷ができます。
事業所開設に必要な費用
一人ケアマネの運営に必要な事務所は、アパートでも問題ありません。
居宅介護支援事業所の設立にあたって、各市区町村で定められた設備基準があります。
ここでは立ち上げ時点で揃える最低限ものを挙げています。
この費用全てを準備すると、費用はおよそ50~60万円になります。
介護用ソフトやパソコンなどは、経費削減が難しいですが、事務用品やテーブルなどで経費削減する事が望ましいです。
ケアマネは訪問外出が多く、電話番の事務員を雇う必要がある
居宅介護支援事業所のケアマネは、外出している時間の方が多いです。
不在時は、事務所の固定電話を転送電話にすることは勿論ですが、いつも電話に出られるわけでもありません。
伝言やかけ直しでも問題ない内容は、事務員に受けてもらった方が、訪問時の業務中断が少なくて済みます。
ケアマネの担当件数に限度あり、一人ケアマネの収益にも限度がある
ケアマネの一人当たりの担当件数には、制度上で限度が定められています。
運営基準で決められた件数を超えると、運営基準減算として介護報酬が減算されます。
ケアマネの介護報酬は、担当利用者の要介護度により報酬額も決まっています。
介護度 | 介護給付費(会社への報酬金額) |
要支援1・2 | 約5,000円 |
要介護1・2 | 約10,000円 |
要介護3・4・5 | 約13,000円 |
居宅介護支援費の報酬額は法改正でほぼ毎年度変更されています。
詳しく知りたい方は居宅介護支援・介護予防支援の報酬・基準についてを参考にしてください。
一人ケアマネで事業所を運営した場合の1か月の介護報酬は、多い月でも約50万円に満たないのが現実です。
担当利用者数が減少した月は、更に少なくなります。
一人ケアマネの事業所では、生活できる収益は見込めます。
しかし、会社に大きな利益を上げる事は事実上不可能です。
居宅介護支援費の収益は、2か月遅れで入金される
居宅介護支援費は、都道府県国保連合会に、毎月10日までに、前月分を請求します。
その請求額が実際に入金されるのは、請求した月の翌月、つまり2ヶ月後です。
サラリーマンのように、今月働いたら、翌月に給料が入る訳ではありません。
例えば4月から事業所が稼働したら、6月に入金されます。
この2ヶ月間は、何も得ずに働くことになります。
そもそも国は複数人の居宅介護支援事業所を求めている現実
居宅介護支援事業所の居宅料の算定に特定事業所加算と言うものがあります。
特定事業所加算が算定できるか否かによって、居宅の収益が大きく違います。
そのため現在運営している居宅介護新事業所の殆どが特定事業所加算を算定しています。
そして特定事業所加算を算定する条件は、一人ケアマネでは決して実現できません。
一人ケアマネでは、特定事業所加算を算定する条件を満たしません。
この加算を算定するか否かで、事業所の収益はかなり違います。
その他会議の実施や研修参加など、国が求める内容は多くなるばかりです。
一人ケアマネの事業所に国が懸念するのは、ケアマネに何かあった時のフォロー体制が無いことが一番です。
ケアマネが働きやすい職場環境については
定年までケアマネジャー!働きやすい会社に所属する事が一番の条件を参考に読んでみてください。
この記事のまとめ
ケアマネジャーの経験が長くなり、請求業務までできるようになると、誰もが一度は独立を考えます。
確かに自由に働くには、独立が一番の確実な方法です。
しかし独立はそれなりにリスクもあります。
1人ケアマネの事業所で独立しても、大きな利益を得ることはできません。
一番良いのは、自分の希望する働き方、収入に納得できる会社に所属することです。